抗菌と抗ウイルスの違いを正しく理解する
抗菌と抗ウイルスの違い
抗菌と抗ウイルス。似ている言葉ですし、何気なく聞いていると、どちらも同じ感覚で捉えられがちな言葉です。


細菌とウイルスの違い
抗菌と抗ウイルスの違いを正しく理解するためには、まずは、細菌の種類や、菌の違いを正しく理解する必要があります。
前回、こちらの記事で、ウイルスと、細菌、真菌の違いをお伝えしました
復習をかねて、その違いを表にしますと、以下の様な違いがあります
微生物 | |||
種類 | ウイルス | 細菌 | 真菌 |
大きさ | 数十nm~数百nm | 1μm前後 | 1~10μm |
細胞 | ない | ある(核膜なし) | ある(核膜あり) |
増殖 | 自己増殖できない | 自己増殖できる | 自己増殖できる |
ここは、言葉の定義をどこにみるかで、混乱しやすい部分なので、丁寧に解説していきます。
人を病気にする要因として 病原体、病原菌の存在があります。
もともとというか、かなり昔の時代は、病原体の存在が何なのか、分かりませんでしたが
顕微鏡の開発によって、ウイルスや、細菌、真菌などの、病原菌、黴菌(バイキン)などが、その原因であることが分かってきました。
そもそも、病原体は、病気の原因になるもの全体に使われる言葉でしたが、今は 病原体≒病原菌というニュアンスで使われています。
抗菌の定義
また、「抗菌」についても、定義がいろいろありまして
こちらで解説していますが
広義の意味では、「抗菌」も 菌に対抗するという意味合いで、色々な菌に対して使える言葉でもあります。
JIS(日本工業規格):「JIS Z 2801抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」においては
加工されていない製品の表面と比較して、細菌の増殖割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)である場合、その製品に抗菌効果があると規定していて。
これが、工業的な意味合いでの「抗菌」の定義となっています。
この試験で確認される、菌の種類は 「黄色ぶどう球菌」、「大腸菌」が、検査対象となっているので
特に注意書きがない、補足が無い「抗菌」というのは イコール 抗(病原性のある)細菌を指しているということが出来ます。



抗ウイルス性の確認方法
抗菌(抗細菌)について、解説したので、抗ウイルス性についての、確認方法も解説します。
実例として、こちらで紹介している、富士フイルムさんの性能評価で説明します。
Hydro Ag+ 抗菌フィルム 評価方法
JIS Z 2801 準拠(35℃100%)
黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌):99.99%死滅(24時間)
大腸菌(グラム陰性菌):99.99%死滅(24時間)
インフルエンザウイルス:99.99%死滅(24時間)
このデータを見ると分かりやすいですが
上二つの評価は、JIS Z 2801に基づいて、抗菌性(抗細菌性)の評価をしています。
インフルエンザウイルスは、ウイルスですので、その評価は、抗ウイルス性の評価という事ができます。

アキレス ウイルセーフの評価方法
アキレスの製品も見てみみましょう
ウイルスタイプ | 60分後 |
エンベロープ有 | 99.99%以上減少 |
エンベロープ無 | 99.99%以上減少 |
(アキレスウイルセーフ サイトより引用 測定方法 ISO18184-2014 にて測定)
アキレスさんの製品 ウイルセーフは、不織布という、プラスチック繊維ベースの材料を使っているので、その評価も
繊維製品の抗ウイルス性試験方法(ISO18184:2014)に準じて、行われています。

抗菌商品、抗ウイルス商品を選ぶポイント
実際のところ、抗菌フィルムや、抗菌グッズが、ウイルスに対しても確実に効果があるかは、断言する事はできません。
ウイルスに対しての試験を行っていない製品というのは
「効果があるかもしれないし、ないかもしれない」といった、可能性の話になってくるでしょう。
一方、抗ウイルスと明言している商品に関しては、なんかしらのウイルスの対しての検証を行っている商品である可能性が高いです。
ここで敢えて「可能性が高い」としているのは、もしかすると、抗菌と抗ウイルスの違いを良く理解しないまま、紹介されている製品があるかもしれないからです。
実際、SIAA(抗菌製品技術協議会)の設立の背景には、そういった、不当な「抗菌」「抗ウイルス」といった表記に対しての動きでもありました。
自分でしっかり、確認する事も大切ですね

そして、実際の特定ウイルスに対して効果があるか? これを言及、標榜することも、薬事法の関係で認められていません。
なので、「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)に効果あり!」と無責任に掲げている商品があった場合。
それも、その言葉を鵜呑みにせず、自己判断で、しっかり選んで商品を手にすることが大切と言えるでしょう。
